幡野広志さんの新刊 『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』紙本の発売日からはや10日、ジリジリと待っていたところ、本日やっとKindle版も公開されました。
今日もまだ体調不良で半ば臥せっていたのもあって、一気に読み終えました。なんて言いつつ、途中からしっかりオヤツとか食べちゃいましたけど(笑)
著者の幡野さんは2017年に多発性骨髄腫という血液のがんを発病し、既に末期で余命3年という宣告を受けました。またそのことを2017年12月にSNS上で公開したことで、かなり話題になったので、ご存知な方もいらっしゃるんではないかと思います。
幡野さんは写真家ですが、元猟師でもあり、最近では、写真集だけでなく文章も書かれていて、本書が2冊目の著作となります。
幡野さんの癌は難治系で最終的に激痛で苦しみながら最期を迎えるという病気だそうです。そのため、既に安楽死を行うべくスイスの安楽死団体への登録をすませているとのことです。
ちょうどこの前、NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」という番組を見たばかりで、彼が登録したスイスの団体というのはここなのかな、と思いました。ドラマの説明を上記サイトから以下に引用します。
去年、一人の日本人女性が、スイスで安楽死を行った。女性は重い神経難病を患い、自分らしさを保ったまま亡くなりたいと願っていた。患者の死期を積極的に早める安楽死は日本では認められていない。そんな中で、民間の安楽死団体が、海外からも希望者を受け入れているスイスで安楽死することを希望する日本人が出始めている。この死を選んだ女性と、彼女の選択と向き合い続けた家族の姿は、私たちに何を問いかけるのか見つめる。
ドキュメンタリーの中では、安楽死を選んだ彼女と同じ病気で生き続けることを選んだ女性も登場しました。
本人の意思と家族の思い、難しい問題だと思います。
幡野さんは、患者本人の意見を優先すべきだ、と唱えますし、私もそう思います。
家族と言っても様々な種類の家族がいます。配偶者と子供以外に、両親や兄弟、祖父母に加えて、叔父叔母から甥や姪、義理の親類縁者まで入れると結構いるかもしれません。が、いれば良いというものでもないのが人生ですね。
今回、幡野さんはNASAにおける宇宙飛行士の「直系家族」について言及しました。
NASAでは、宇宙に行く宇宙飛行士のために様々なフォロープログラムを用意していて、特にこの「直系家族」向けの特別なケアプログラム(家族支援プログラム)があるそうです。
この「直径家族」では、配偶者が一番重要で、次いで子供とその配偶者となります。両親や兄弟姉妹、祖父母は、乗組員の親しい友人たちと一緒に「拡大家族」という一段下の枠に分類されるそうです。その扱いは段違いで、宇宙滞在中の緊急連絡は直系家族にしか行かないとのことです。(独身の場合は不明です😅)
以前何かで読んだなーと思いつつ、巻末に参考図書として向井万起男さんの『君について行こう』が載っていたので、あーなるほどと。
漫画の『宇宙兄弟』にもその辺の話は結構出てきますが、私が最初に知ったのは向井さんの本でした。万起男さんは当時、直系家族に何故ご両親は入らないのかを疑問に思ったそうです。日本人なら、数多くの人がそう考えるのかもしれません。
が、これが、がんに罹った病人の家族のため、と考えた場合、どうでしょうか?
このNASA式の直系家族という考え方、日本に馴染まないのか?と言われると、保険金の受取人選択を考えた場合、一番に配偶者で次に子供というのが一般的なセオリーかなと思うので、将来設計という意味では(両親は既に故人となっているのが前提であったとしても)、既に既知なのかなーとも思います。
でも、両親がまだ若く、自分が独身だったり、もしくは病人だったりしたら。。。果たしてどうなのか?
だらだら書いてきましたが、幡野さんが本書で言いたかったことは「直系家族は自分で選べる」ということです。人生と言い換えても良いかもしれません。
幡野さんは以前の本のなかで、がんと分かってからの家族との軋轢や親族とのトラブルについても書かれていました。
様々な軋轢から、現在の幡野さんは親御さんとは死ぬまで会わないと決めているそうです。
本書の意見に共感する人も共感しない人も沢山いるかと思います。それは個人個人、おのおの生きてきた環境が異なるので、当たり前のことだと思います。
自分の人生の正解は、自分にしか判断できないものでしょうし。
でも、こういう意見もあるのだ、ということを知っておくことが大事なのではないか、と、今回もそう思いました。
先にも触れた前作、『ぼくがこどものころ、欲しかった親になる。』と合わせて、読むことをお勧めしますが、もちろん単独で読んでもとても興味深い本かなーと個人的には思います。