清里をうろうろした後は真っ直ぐ長野県側へ移動しました。お宿のチェックイン時間までにはまだ少し余裕があったので、今度は蓼科の笹離宮に行きました。

笹離宮は、笹専門としては世界一を誇る植物園と、京都桂離宮の昭和大修理を担当した建築家・安井清氏の設計による回遊式数寄屋庭園(外露地・内露地)で構成されています。

正門から笹林に敷かれた鞍馬石の道を通って進みます。



清風萬里館(せいふうばんりかん)が見えてきました。こちらで受付を行います。

この館は入園受付、事務所、売店、大広間、方丈の間を備えた建物で、「方丈の広さを基とした和風の山荘」をコンセプトに故安井清氏の基本設計を基に建てられました。生前、安井清氏が遺した「日本の山々にある広葉樹を使った和風の山荘」というスケッチを基に、磯崎進ら弟子集団の清塾生によって建設されました。
笹離宮サイトより
清風萬里館という名前は「昨夜一声の雁、清風萬理の秋」という禅句からとったものだそうですが、故安井清氏の名前にもちなんでいるとのことでした。

頂いたパンフレットによりますと、安井清氏は大正14年京都に生まれ、昭和20年に立命館大学卒業後、家業である安井杢工務店に入社し、生涯伝統建築ひとすじの道を歩んだ方だそうです。安井杢工務店は江戸時代の元禄年間から続く歴史を持つ宮大工で、京都を代表する数寄屋建築の担い手とのこと。
安井清氏が手がけた仕事はどれも国宝級の案件ばかりで、桂離宮の昭和の大修理、千利休の唯一の遺構、国宝の茶室・待庵の修理、松花堂昭乗ゆかりの草庵と書院の修理、織田有楽斎のつくった国宝の茶室・如庵の移築、ボストン子ども博物館へ京の町家を移築、ニューヨークのメトロポリタン美術館日本ギャラリーの書院の建設などなど、第一級の伝統建築に数多く携わっておられました。
桂離宮などの国宝重文建築を扱うには様々な制約やプレッシャーがあったかと思いますが、これまで培って来た古来からの建築技術を弟子達や後世に残すには、この笹離宮という環境がうってつけだった模様です。
園内には大小様々な灯籠が11基置かれており、それらは全て安井清氏が収縮し所蔵していた灯籠だそうです。
受付して安井清氏の紹介ビデオを見た後、庭園の内露地へ向かいました。


延段(のべだん)とは、庭に設けられた石張りの通路のことを指すそうです。園内には様々な延段がありました。

入り口から清風萬里館までが外露地エリアで、この中門をくぐると内露地エリアです。

芝生のように見えるのは、オロシマチクという笹で、チクだけど竹ではなく、日本一小さい笹とのこと。




内露地一面が先に書いたオロシマチクで覆われています。これは湖の水面(琵琶湖)を表しており、白い班(ふ)の入ったチゴササで州浜(すはま)を、州浜の先頭には岬灯籠が置かれていました。ここにも見立てが。




真(しん)の延段
延段の意匠である「真」「行」「草」は漢字の「楷書」「行書」「草書」に対応し、「真」が最も格式が高く整った形とのこと。メインに続く道ですね。





市松模様の挿し瓦は京都嵐山にある天龍寺塔頭宝厳院の瓦葺き替えの際に出た古瓦を使ったものだとか
茶棟の脇を抜けると、笹の植物園エリアに入ります。


笹類専門の植物園について
笹離宮は、国内および海外の笹類を中心に、100種を超えるクマ笹の仲間を集めた笹類専門の植物園です。これほど多くのクマ笹の仲間を集めた植物園は他に類を見ません。世界一の笹類植物園を目指し、単に笹類の標本植物園にとどまらず、クマ笹の未知なる可能性を引き出し、地域文化に貢献することを目指しています。
笹離宮サイトより
熊笹は主に本州の高原地帯や北海道の山野に生息する植物です。静岡にある竹専門の植物園である 富士竹類植物園内で、近年、寒冷地を好む笹が温暖化の影響により力が無くなって来たことを受け、希少な品種を救うべく、涼しい高地の蓼科に移植したとのことでした。パンフレットによると、現在は120種ほどあるようです。
植物園エリアの中央まで来ると、ポッカリ空間が開いていました。大振りな蹲(つくばい)のある隋月泉です。

降り蹲は地面を一段掘った所に蹲を置くことで、そこから見上げて広く庭園を見る視点を与えた、小堀遠州公の作庭工法とのことです。こちらは世界最大の降り蹲なんだとか。石臼を逆さにして作ったという水盤の中央から水がこんこんと湧き出ていました。



続いて、板倉造りの神坐(かみくら)へ。

伊勢神宮にも見える日本古来の建築様式で、京都の酒解神社にある重文「神興庫」を範として建立されたとのこと。
120種あるという笹ですが、その中のほんの一部をご紹介します。丈の高いのから低いのまで様々でした。






途中にあった小屋から煙がモクモク出ていました。屋根は20トンの笹を使った笹葉葺きだそうですが、青々とした笹もたっぷり生えていました。屋根の笹は生きているので、水をやって育てているそうです。


こちらの建物は縄文窠(じょうもんか)というそうです。解説を読むと茅野市泉野に現存する窖を再現して作られたとのこと。昔から農家が冬期間に藁細工の作業場として使っていたものだそうで、年中薪を炊いて煙で燻すことで虫除けになるとか。

ゴザの下には笹炭が敷き詰められており、非常に清浄な空間になっているそうです。専用スリッパで入室することが出来ました。






何の実でしょう???

ちょうど横を通りがかった職員さんが「登ると見晴らしが良いので、周囲が見渡せますよ〜」と教えて下さったので、上まで登ってみました。

八ヶ岳を模した築山だそうです。

展示館に戻ってから、お土産類を物色しました。


笹の葉は昔から漢方に使われており、笹茶は以前から身体に良いお茶としてあちこちで飲んでいる気がします。こちらの笹茶を試飲させて頂いたところ、とても美味しかったので、自分へのお土産に買いました。

ハチミツは近所の原村の物で、はちのわさんの商品でした。抗生物質などの薬剤不使用で、非加熱の生はちみつということで、お試しで買ってみました。
こちらの協賛企業を見ると漢方薬局が多いようです。それだけ薬効のある植物なんですね。
熊笹は文字通り熊の主食だそうで、冬眠前に多食するそうです。同じ熊科のパンダの主食と思えば、それなりに栄養もあるんだろうと思われます。
笹に特化した植物園とは珍しいですね。
風が吹くと笹独特の葉っぱがすれる音に囲まれそうです。
それも色んなパートの合唱で。
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agehamodokiさん、コメントありがとうございます😊
途中、茶亭の椅子に座ってぼーっと佇んでみましたが、音には気付きませんでした。
確かに風が吹くと「さやさや」という音が聞こえてきそうですね。ちょっと残念。
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笹離宮ですか。これは珍しいです。有る事さえ知りませんでした。
中に建つ萬里館や翠隠などの建物も見事です。近くであれば飛んで行きたいです(*^_^*)
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wakasahs15thさん、コメントありがとうございます😊
とても興味深い植物園でした。
wakasahs15thさんの視点とカメラで撮ると、素晴らしい景色が撮れそうですね。
子供の頃からずっと桂離宮に行きたいと思っていました。そこを修理した方なのねーと考えながら周りました。
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植物園の中に竹コーナーがあるのは
見たことありますが
竹専門は珍しいですね!しかも
贅沢な造りが素晴らしい。
赤い果肉に黒い種?の、気になって
画像検索したらどうやら山芍薬なのでは、と。
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洋子さん、コメントありがとうございます😊
温暖化を受けて静岡から移植された笹もあるそうです。お米もですが、笹もなんですねぇ。
山芍薬でしたか!
自分でも探したのですが、探し方がいまさんだったらしく、全然見つけられませんでした。スッキリしました。
ありがとうございます(^-^)
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笹が120種類もあることに驚きました。
竹細工のように笹細工というのもあるのですね。
笹に囲まれると香りも楽しめて良い時間を過ごせそうですね。
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ゆきだびとんさん、コメントありがとうございます😊
正直言って、竹細工と笹細工の差はよく分かりませんが、どちらも好ましいです。
お茶室等、施設を貸し出ししているそうなので、こういう場所で飲むお茶席はとても素晴らしいだろうなぁと思いました(^-^)
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初めてコメントいたします!!
とても素敵な植物園ですね♪
僕は四国ですけども、機会があれば県外にしっかりとコロナ対策をして、旅行に行きたいと思っています!(^^)!
ブログが気になるので読者登録させてもらいます。
宜しくお願いします。
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シゲちゃんさん、コメントありがとうございます😊
四国からだとかなり大変かもですね。
私もいつか四国に行きたいと思っています。
登録ありがとうございます。
気に入って頂けたら幸いです(^-^)
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